座長が三十代頃の話です。座長は某中学校で生徒指導担当の教師をしていました。
当時、担当学年に体重100Kgを越えるような身体の大きなM男君という少年がいました。彼は病気がちで学校を休むことも多い生徒でした。
このような状況から、M男君は友だちがほとんどいませんでしたが、ある一部の生徒たちとは交流していました。その生徒たちとは、髪を金髪にしたり、バイクを乗り回したりしていた、いわゆるヤンキーグループでした。
ある時、座長はM男君につき合う仲間を考えた方が良いというような話をしましたが、彼の答えは「彼らといると楽しい。友だちでいてくれるから」というものでした。座長は、そういうものかと思い、それ以上は話をしませんでした。
彼らが3年生の秋、M男君は持病が悪化して、帰らぬ人となってしまいました。学年の生徒たちも教師も悲しみの中、大勢の人たちが通夜と葬儀に参列しました。
半年後、生徒たちは卒業式の日を迎えました。校長先生の配慮で、M男君の名前も呼ばれました。その夜、座長と担任は卒業証書を持ってM男君の自宅を訪問しました。
その時、M男君のお母さんが涙を流しながら、ある話をしてくれました。
その日の午後、例のヤンキーグループの少年たちが、M男君の家に現れて、自分たちの卒業証書を仏壇の前で広げながら、「オイ!M男、オレたちは卒業したぞ!お前も一緒だ!」と叫んで、泣いていたということでした。
その時、座長はM男君の「友だちでいてくれるから」という言葉を思い出して、胸が熱くなりました。
※この話は決してヤンキー少年たちを礼賛したものではなく、あくまでも子どもたちの「友だち」の存在について書かせてもらいました。
